広域避難計画は問題だらけ?!
こんにちは!市民測定グループ「こつこつ測り隊」です。
私たちは地域の放射線測定以外にも、身内での学習会を行っていました(今年度はコロナで集まれていません)。メンバーの半分は、2011年当時、まだ育ち盛りの子どもを抱えた「ふつうのお母さん」。ですがそれ以外に、原子力に携わっていたリタイア世代や、生物の先生をやっていた人など、専門知識のある人がいるので、その人たちから「原子力の基本のき」や「放射線のDNAへの影響」などを学びながら測定を行ってきました。
でないと、測定した数字の意味や、それが子どもたちにどう影響するのかなど、専門家ですら分からないことだらけの状況で、何をどこまで心配したらよいのか、わからなかったからです。
起きてしまった福島第一原発事故の影響も心配でしたが、地元茨城県にある東海第2原発が事故を起こしたら…。ほとんどのメンバーがその10㎞圏内に住んでいるために、それは重大な関心事でした。
広域避難計画は問題だらけ⁈
今から2年も前になってしまいますが、2018年10月に私たちが作成したリーフレットがあります。「原子力災害時に備えた『広域避難計画』は問題だらけ⁈」というタイトルで、A4サイズ4ページのもの。
なぜ、これを作る必要があったのかと言いますと…
2018年11月27日は東海第2発電所の運転開始40年のお誕生日だったからです。
https://www.asahi.com/articles/ASL744437L74ULBJ00H.html
2018年は、東海第2原発の寿命を延ばそう(つまり運転開始から60年後の、2038年まで運転を可能にする)という運転延長申請の成り行きに注目が集まっていました。
↓ こちらはウィキペディアからの引用。東日本大震災の時の東海第2原発の状況です。
一歩間違えば、福島第1原発と同じことになっていたとわかります。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により、原子炉が自動停止した。常用の外部電源も停止したことから、非常用ディーゼル発電機3台を起動して運転に必要な電源を確保したが、津波によってディーゼル発電機用海水ポンプが故障したため、残るディーゼル発電機2台で原子炉冷却に必要な電源を確保した[4]。その後、外部予備電源が回復し、3月15日0時40分(JST)に原子炉水温度が100℃未満の冷温停止状態となったことを確認した[5]。その間は注水と、水蒸気を逃がすための弁操作の綱渡り的な繰り返しで、冷温停止までにかかった時間も通常の2倍以上であった[6]。
しかし、高さ6.1m(想定津波5.7m)の防波壁に到達した津波の高さは5.4mで、工事中のため防波壁には穴が開いていた。その穴から入った海水によって、全3台の海水ポンプが水没(2台は水深が低かったため稼働)し、非常用ディーゼル発電機1台も停止した。原子炉は冷却し続けられたが、もう少し波が高かったら、全ての電源が潰滅し、福島第一原発と同じ状態になっていたという。日本原電は、「(冷却機能が全て失われた)福島第一の事態になった可能性は否定できない」と述べている[7]。
福島第1原発では軽視された(予算を削るために、想定津波の高さを数回にわたって
低く修正させたと言われています)津波対策を日本原電が真っ当に行っていたおかげで、かろうじて70㎝ の余裕があり、それでも完成していなかったために危険な状態に陥ったことがわかります。
そして、この時の冷温停止からずっと止まったままの東海第2原発を再稼働させようという動きが活発になっていたのが2018年でした。
2011年の震災当時、東海第2原発が電源不足に陥っていることなど、住民にはもちろん知らされませんでした(後日、新聞記事で知った)。
結果的に、おそらく現場の方の尽力で、東海第2は制御不能の状態にはなりませんでしたが、実際に放射性物質が敷地外に漏れる状態になっても「パニックになるから」という理由で避難指示を出さなかった可能性が高いのではないか…と私などは思います。
あの事故から学んだ上で行政が作っている「原子力災害に備えた広域避難計画」は、住民を放射能から守ることを目的にしておらず、あえて言うなら住民の被曝を前提に作られています。
それを住民が知らないまま、東海第2原発がなし崩しに再稼働してしまうのは、まずいのではないか。「絶対、安全」「5重の壁に守られているから、敷地の外に放射能が漏れることはない」。それはあり得ない事だと学んだのだから、私たちは冷静にリスクと向き合う必要がある。
事故が起こったら、どうなるのか。
行政の避難計画はどうなっているのか。
少しでも被曝を減らしたかったら、どう行動するのが良いか。
そういう事を自分の問題として、考えてもらうことを目的に、このリーフレットを作りました。
一気に全部を解説すると長くなり過ぎてしまうので、今回は1ページ目のみの解説です!
広域避難計画はだれが作っているのか
https://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/keikaku/keikaku.html
原子力規制委員会が作っている「原子力災害対策指針」に基づいています。
https://www.nsr.go.jp/data/000024441.pdf
これを受けて、茨城県では、「原子力災害に備えた茨城県広域避難計画」を策定しています。
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/gentai/kikaku/nuclear/bosai/01.html
そして、県内各市町村の役所の中の担当課職員が、それぞれ数名で四苦八苦しながら、実際の細かい避難計画を作成している、というのが実情です。
この資料の30ページ目に、どの市町村がどこに避難するのか詳細が載っています。
各市町村担当者は、これを元に避難計画策定作業を進めています。
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/gentai/kikaku/nuclear/bosai/documents/honbun.pdf
県のPDFの方が、上の地図より詳しいものを見ることができますよ。
どこに逃げるの?
2018年10月の時点では、上記の範囲が決まっていました。
しかし今年、避難所での新型コロナウィルス対策を検討しなければならなくなり、避難所の収容人数が減少。おそらく避難計画は、また作り直さなければならなくなっています。担当者の心労が積み重なっていそうで心配です…。
各市町村の避難計画 進捗状況
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/soshiki/5/11/3/atomic/index.html
ひたちなか市の基本指針(案)
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/material/files/group/16/atomic_kihonhoushin.pdf
ひたちなか市作成 主な避難経路(案)
https://www.city.hitachinaka.lg.jp/material/files/group/16/atomic_hinankeirozu.pdf
茨城県内で、避難計画を策定し終わっているのは「笠間市」「常陸太田市」「常陸大宮市」の3行政区のみ。笠間市などは、いったん完成させた上でその後さらにブラッシュアップしていく、との事ですが、多くの自治体では、この避難計画策定は難航しています。
なぜ、難航しているのか。
その理由は、また次回。